最近話題のおすすめ小説

最近話題のおすすめ小説のコーナーです。

歴史小説・恋愛小説・推理小説・ミステリー小説・現代小説・純文学など、読書好きで小説ファンのわたしが、最近話題の本やこれまでに読んだ本のあらすじや感想、書評、そして、面白いおすすめ小説を紹介しています。

特に、ここに『 おすすめ小説 』として紹介した作品は、最近話題になっている小説の中から、『 感動した小説 』や『 おもしろい小説 』 などを管理人の独断と偏見で選び、各々にあらすじや感想、書評を記載して一覧にしたもので、これからも随時更新していく予定です。



★ 告白

湊かなえ さんの作品

おすすめ度


思春期にある少年の思いと歪んだ家族愛、そして、愛娘を殺された女性教師の復讐劇を描いた作品です。

終業式の日、担任の女性教師はクラス全員に向かってある衝撃的な告白を始める。
「私は、今月いっぱいで退職します。」
その理由は、四歳だった愛娘をこのクラスの生徒に殺されたからです・・・。
そんな衝撃的な告白から物語は始まって行く。
そして、女性教師が考えた驚くべき復讐の方法に驚愕せずにはいられません。
え!?そんなことを・・・

物語のストーリーは、ほとんどが登場人物の会話(モノローグ)で進んでいく。
その中の全員が自分自身の内面にある気持ちや感情、真実を話しているように見えて、
実際はどこか食い違っていることに違和感を覚えていました。
なぜ、そんな感情や行動になるのか?
そこには、色々な形の愛が自己愛を含めて垣間見えてきます。

思春期にある少年少女が抱えている問題は、こんな所にもあったんですね。
罪を犯してしまった子供もそうでない子供も、
結局は、みんなもの凄い孤独を抱えて生きているんだということに気付きました。
愛する家族を失った悲しみ、失う悲しみはこれほど深い・・・
ラストで語られる復讐のドンデン返しには、仰天しますよ。
あなたならどう考え、どう行動しますか?

★ 華麗なる一族

山崎豊子さんの作品

華麗なる一族(上)

おすすめ度


金融業界と国家権力との癒着、人間の生き様を通してこれらの内幕を描いた作品です。

阪神銀行頭取の万俵大介は、都市銀行再編の動きを前に、上位銀行への吸収合併を阻止するため必死であった。
長女一子の夫である大蔵省主計局次長を通じて、上位銀行の経営内容を極秘裏に入手し、小が大を喰う企みを画策するが、その裏で、阪神特殊鋼の専務である長男鉄平からの融資依頼をなぜか冷たく拒否する。
さらに、米国企業からの増注契約をキャンセルされて危機に陥った鉄平であったが、旧友である大同銀行の三雲頭取が多額の融資を了承してくれる。
しかし、その矢先、熱風炉が爆発するという事故が起こる。
一方、大同銀行の専務と結託した万俵大介は、鉄平の阪神特殊鋼が不渡手形を出し、倒産へと追いやらされる最中、上位の大同銀行との合併をはかる。
そして鉄平は、大同銀行の頭取を出し抜いた専務と父親大介の関係を知るに及び、丹波篠山で猟銃自殺をとげる。
その頃、帝国ホテルで挙行された新銀行披露パーティの舞台裏では、新たな銀行再編成が始まっていた。

★ 赤い指

東野圭吾さんの作品

赤い指

おすすめ度


息子が起こした殺人事件に直面した家族の二日間の悪夢と、孤独な愛情の物語を描いたミステリー小説です。

照明器具メーカーに勤る平凡なサラリーマン前原昭夫は、ある日、「とんでもないことが起こった」という妻からの電話を受け、急ぎ帰宅した。
そこで彼を待っていたのは、夫への愛がなくなった妻の八重子と過保護に育てられた中学生の一人息子の直巳、昭夫の母で認知症の政恵。そして、直巳に殺された女児の死体だった。
最悪の事態に動転すると同時に、今まで家族の問題を重荷だと考え、仕事を理由にそこから避けることだけを考えて日々をやり過ごしてきた自身を振り返り、暗澹たる思いに沈む昭夫。
一方、妻の八重子は、そんな彼を責めたて、自分はどんなことをしても息子を守ると強弁する。
そんな妻の言い分を聞いているうちに、昭夫の脳裏にあるアイデアが浮かぶ。
だが、それはあまりにも身勝手で邪悪なアイデアだった・・・。

息子が犯した殺人事件を必死に隠蔽しようとする夫婦。
母親の子供に対する深い愛情が、こんな歪んだ形で表現されているところに、現代社会の問題点を鋭く浮彫りにしていると感じました。
特に、いじめによって心を閉ざした息子、その息子の顔色を伺う妻、
そして、認知症の母親の介護などといった今現在でもある家族が抱える問題と、そんな息子が殺人事件を起こしてしまったら、親はどうするのかを醜くリアルに描いています。
人間として本当に必要なもの、本当の生き方とは何なのか、親子の絆、家族愛というものについて考えさせられる作品です。

★ まほろ駅前多田便利軒

三浦しをん さんの作品
(2006年・直木賞受賞)

まほろ駅前多田便利軒

おすすめ度


まほろ市の駅前にある便利屋、そこに舞い込む様々な出来事を通じて描く二人の男の物語です。

東京の外れにある「まほろ市」の駅前で、多田は「多田便利軒」という小さな便利屋を営んでいる。
そこに、高校時代の同級生の行天が突然転がり込み、気が付いたら家に住み着かれてしまっていた。
二人の男の元に舞い込む仕事は様々で、大半は部屋の掃除やペットの世話などの雑用であるが、時折危ない仕事の依頼が持ち込まれる。
謎だらけで破天荒な行天にはいつも振り回されっぱなしの多田であったが、仕事を通して次第に理解しあっていく。
そして、いろんな仕事をこなして行く内に明らかになる二人の予想外の過去・・。

多田と行天の二人のテンポがとてもよく、飽きさせないスピード感とリアリティ感があって一気に読んでしまいました。
その他の登場人物のキャラクターも物語に深い造形を与えているとともに、前後の話が少しずつ関連していて、人と人のつながりを強く感じました。
そして、最後はホロッとさせられ、どこか温かい気持ちになれる作品です。

★ 風に舞いあがるビニールシート

森 絵都さんの作品
(2006年・直木賞受賞)

風に舞いあがるビニールシート

おすすめ度


表題作の「風に舞いあがるビニールシート」は、東京の国連難民高等弁務官事務所で働く女性を主人公にした、愛するも離れ離れになることを選んだ二人の物語です。
その他、様々な価値観を持って懸命に生きる女性たちを主体に6つの短編を集めた小説です。

国連難民事務所で働く里佳は、広報部勤務で上司であるエドと恋に落ちて結婚するが、仕事一筋で現場主義のエドとの心のすれ違いから、ついに7年間の結婚生活にピリオドを打ち離婚した。
そのエドが、赴任先のアフガンで殉職したという知らせを受け驚愕する。
エドの死を受け入れることができずに立ち直れないでいる里佳を、ある日、エドがアフガンで助けた難民の少女に会ったという通信記者が訪ねて来る。
そして、エドが救ったものの大きさを知った里佳は、自分の心の中にあったしこりを見いだし、悲しみから立ち上がり、新たな一歩を踏み出そうと決意する。

わたしは、エドが語った 「僕は、いろいろな国の難民キャンプでビニールシートみたいに軽々吹き飛ばされていくものたちを見てきた。
人の命や尊厳も、ささやかな幸福さえもビニールシートみたいに簡単に舞い上がり、もみくしゃになって飛ばされていくところを・・」という言葉が特に印象的で、せつない気持になりました。
そして、エドの救ったものがどんなに尊くて大きなものであったのかを知るにおよび、感動とともに元気を貰ったような気がします。
自分の価値観を大切に守り、お金よりも大事なものを持って精一杯生きて行く。そんな、生きる力を与えてくれる作品です。

★ 日本沈没

小松左京さんの作品

日本沈没(上)

おすすめ度


地震列島日本の未来をも予見する、SFのジャンルの枠を超える小説です。

伊豆沖の小島が一夜にして海中に沈んだ。原因究明のため、深海調査に参加した深海潜水艇のパイロットである小野寺俊夫は、海底火山研究の権威で地球科学博士の田所雄介の指示の下、同僚の結城と共に日本海溝に潜った。
そして、そこで深刻な異変を発見し驚愕する。
折から日本各地に大地震や火山の噴火が続発、富士火山帯の活動も活発化していた。
日本列島がわずか1年後に沈没すると予測した田所博士であったが、他の科学者たちは「聞くに値しない妄想だ」と一蹴する。
しかし、内閣総理大臣の山本尚之だけは、この事態を重く受け止め、危機管理大臣として鷹森沙織を任命、秘密裏に「ある計画」を進める。
そんな矢先、関東地方を大激震が襲い、東京は壊滅状態となってしまう。
エネルギーの放出によって、今後はこのような大地震は当分ないだろうと言う大多数の研究者の中、田所博士だけは、日本列島が沈没する恐れがあることを予測する。
時を待たずして、北海道を皮切りに九州から内陸へと地殻変動の波が日本列島全土に襲いかかる。
もはや、日本沈没の可能性50%という結果が出るほどの状態になってしまった。
日本人は最悪の危機の中で、はたして生き残ることができるのであろうか。

次々と起こる大地震や火山の噴火の場面がまるで目に映るように衝撃的で、話の展開も面白く一気に読んでしまいました。
日本は地震列島と云われ、阪神大震災などの大きな地震も経験し、その恐ろしさも十分判っているつもりでした。
しかし、普段の平穏な生活に戻ると、何時しか人はその時の恐怖も薄れてしまうようです。
近い将来、東京に大地震が来ると予測されていますが、私自身どこか遠い未来の出来事と安心し、危機感を感じていなかったように思います。
この日本沈没という作品は、まるで近未来を予測するかのようで、背筋が冷たくなるのを感じずにはいられませんでした。

★ 不信のとき

有吉佐和子さんの作品

不信のとき(上)

おすすめ度


愛人と子供の存在が妻にバレた時、愛が憎しみに変貌した女の反撃の狼煙があがる。
男の浮気に対する女の非情な復讐を描いた小説です。

大手商社の宣伝部に勤める主人公の浅井義雄は、妻・道子と結婚して15年になるが子供はいなかった。
過去二度も夫に浮気された経験を持つ妻の道子は、夫の愛情をつなぎとめることに必死だった。
そんな折、取引業者の小柳と銀座で飲み歩くうち、浅井はマチ子というホステスに誘われるまま一夜を共にする。
妻にはない淑やかなマチ子に惹かれる浅井、しかし、それはあくまでも遊びのつもりだった。

情事を楽しみながら、仕事も人生も順風満帆と思っていた男の勘違いと愚かしさ、そして、愛が憎しみに変貌した時の女の凄絶な執念には凄みがあります。
いくら社会的地位や外見が良くても、人を裏切れば必ずしっぺ返しが待っている、そのことを痛感させられました。
女性には痛快で、男性には恐怖の作品です。






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