山崎豊子さんのおすすめ小説

山崎豊子さんのおすすめ本のコーナーです。

歴史小説・恋愛小説・推理小説・ミステリー小説・現代小説・純文学など、読書好きで小説ファンのわたしが、最近話題の本やこれまでに読んだ本のあらすじや感想、書評、そして、面白いおすすめ小説を紹介しています。

特に、ここに『 おすすめ小説 』として紹介した山崎豊子作品は、わたしが読んだ山崎豊子さんの小説の中から、『 感動した小説 』や『 おもしろい小説 』 などを管理人の独断と偏見で選び、各々にあらすじや感想、書評を記載して一覧にしたもので、これからも随時更新していく予定です。


山崎豊子さんのプロフィール

山崎豊子さんは、『花のれん』で第39回直木賞受賞し、勤務先の新聞社を退社して作家生活に入りました。鋭い社会性で話題を呼び、のちに映画やテレビドラマでもヒットした『白い巨塔』や、1991年菊池寛賞を受賞した『沈まぬ太陽』など、山崎豊子さんは鋭い社会性で名高い作品を多く執筆されています。
山崎豊子、1924(大正13年)生まれ、大阪府出身。本名、杉本豊子。



★ 沈まぬ太陽

おすすめ度


航空会社へエリートとして入社した主人公が受けた内規違反に対する不遇の報復人事、その不条理に戦いを挑んだ男の生きざまとその家族を描いた作品です。

国民航空にエリートとして入社した主人公の恩地と同僚の行天、その後、組合委員長に担ぎ上げられてしまった恩地は会社側からアカのレッテルを張られ、中近東からアフリカなどの僻地へと転勤させられる。
会社側は帰国をエサに降伏を迫る一方、露骨な差別人事により組合の分断を図ろうとしていた。
一方、組合活動から足を洗った同僚の行天は、一人出世街道を邁進する。
共に闘った同僚の裏切りと家族との別れ、そして焦燥感と孤独が、恩地をしだいに追いつめていく。
そんな逆境の日々のなか、航空史上最大のジャンボ機墜落事故が起きる。
会社の命を受け、救援隊として現地に赴いた恩地は、遺族係として想像を絶する悲劇に直面し苦悩する。
事故原因の究明と凄絶な遺体の検視、そして非情な補償交渉が始まった。 「空の安全」をないがしろにし、利潤追求を第一とした経営のつけが、起こるべくして起きた事故を惹き起こしてしまった。
会社組織の建て直しの一環として新設された会長室の部長に抜擢された恩地は、その調査によって、次々と明るみに出る不正と乱脈、そして腐敗の構造に驚愕する。
ひるまずに闘いを続ける恩地であったが、政・官・財が癒着する利権の闇は、あまりに深く巧妙に張りめぐらされていた。

この小説は全五巻からなる長編小説ですが、わたしは第三巻の「御巣鷹山篇」から読み始めました。会社の上司が遺族であったことから、事故の全容を知りたいという欲求から手に取った小説です。詳細で綿密な調査から執筆されたその内容は、上司から聞いていた事実をリアルに再現させるもので、フィクションの域を超えたものでした。
全編を通して、主人公の不器用ともいえる生き方に、組織として生きるということ、そして真の勇気とは何かを教えられた気がします。

★ 華麗なる一族

華麗なる一族(上)

おすすめ度


金融業界と国家権力との癒着、人間の生き様を通してこれらの内幕を描いた作品です。

阪神銀行頭取の万俵大介は、都市銀行再編の動きを前に、上位銀行への吸収合併を阻止するため必死であった。
長女一子の夫である大蔵省主計局次長を通じて、上位銀行の経営内容を極秘裏に入手し、小が大を喰う企みを画策するが、その裏で、阪神特殊鋼の専務である長男鉄平からの融資依頼をなぜか冷たく拒否する。
さらに、米国企業からの増注契約をキャンセルされて危機に陥った鉄平であったが、旧友である大同銀行の三雲頭取が多額の融資を了承してくれる。
しかし、その矢先、熱風炉が爆発するという事故が起こる。
一方、大同銀行の専務と結託した万俵大介は、鉄平の阪神特殊鋼が不渡手形を出し、倒産へと追いやらされる最中、上位の大同銀行との合併をはかる。
そして鉄平は、大同銀行の頭取を出し抜いた専務と父親大介の関係を知るに及び、丹波篠山で猟銃自殺をとげる。
その頃、帝国ホテルで挙行された新銀行披露パーティの舞台裏では、新たな銀行再編成が始まっていた。

★ 暖簾

暖簾

おすすめ度


船場の老舗昆布商を舞台に、商人としての生活を生き生きと描いた作品です。

戦後、劇的に変わってしまった大阪船場の商いを前に戸惑う父親と、逆境に毅然と立ち向かう息子の対比が印象的でした。

★ 花のれん

花のれん

おすすめ度


寄席を舞台に、主人公の多可が女で1つで建て直していく様子を描いた作品です。

死んだ旦那が道楽で始めた寄席稼業を、後家となった多加が女手一本で切り盛りし、ついには大阪一の興行会社にまで育て上げる。
まさに、女性の底力の強さとともに逞しさを感じました。

★ ぼんち

ぼんち

おすすめ度


船場の女系家族の足袋問屋に生まれた一人息子・喜久治、その波乱に富んだ生涯を描いた作品です。

放蕩を重ねても、帳尻の合った遊び方をするのが大阪の“ぼんち”という。
五人の女たちに囲まれ、金持ちのぼんぼんは逞しい大阪のぼんちへと成長していく、その過程におもしろさを感じた。

★ 女の勲章

女の勲章

おすすめ度


ファッション業界を舞台に、野望に燃える男女の愛憎を描いた作品です。

華やかな服飾界の舞台裏にも、壮絶な人間模様が隠されている。
青年実業家・銀四郎の尽きることのない欲望と愛欲には、バイタリティーを感じつつも、最後のしっぺ返しが印象的でした。

★ 女系家族

女系家族(上)

おすすめ度


莫大な遺産相続をめぐる人間のエゴと欲望を描いた作品です。

伝統を持つ女系家族として育った三姉妹と、彼女らを取り巻く人間の欲望と駆け引き、人はお金にこうも強欲になれるのか。
しかし、最後の亡父の遺言は、まさに痛快な大どんでん返しでした。

★ 白い巨塔

白い巨塔1

おすすめ度


国立大学の教授選挙に絡む大学内部の派閥抗争と、医療裁判に絡む人間の確執と生き方を描いた作品です。

大学病院という巨大な建物の中で繰り広げられる赤裸々な実態、医事裁判における法廷での応酬シーン、そして、財前が迎えた最期の結末。
わたしは、二人の男の対照的な生き方が特に印象に残りました。

★ 不毛地帯

不毛地帯1

おすすめ度


シベリアに11年間抑留された経験を持つ元大本営本部参謀の主人公が、帰国後商社マンとしての人生を歩んでいく姿を描いた作品です。

長い抑留生活での強制労働、組織に身を置く商社マンとしての砂漠の中での石油開発、それらの不毛地帯において様々な困難に遭いながらも不屈の精神で立ち向かっていく主人公・壱岐正の生き方、そして最後のシーンには大いに感動しました。

★ 二つの祖国

二つの祖国

おすすめ度


父なる国アメリカと母なる国日本、二つの祖国を持った日系二世の苦悩を描いた作品です。

アメリカに生まれ、アメリカ人として育てられた日系二世たち。
しかし、日米開戦は彼らに残酷極まりない問いを突きつけた。日本人として生きるのか、アメリカ人として生きるべきか。
合衆国へ忠誠を示すため、米軍兵士としてヨーロッパ戦線に散った末弟・勇、日本軍兵士として出征した次弟・忠、また、自らも米軍少尉として南太平洋に配属された長男・賢治。戦争は天羽家の絆を引きちぎった。祖国とは何か、国を愛するとは一体何なのか。
そして、東京裁判法廷に白熱の攻防戦が繰り広げられる。戦勝国と敗戦国、裁く者と裁かれる者、いずれも我が同胞である。
裁判の言語調整官を勤める天羽賢治は、二つの祖国の狭間に深く突き落とされていく。
妻との不和も頂点に達し、苦境に立つ賢治、彼を見守る梛子の身体にもいつしか原爆の影が忍び寄る。

★ 大地の子

大地の子1

おすすめ度


満州軍遁走によって中国に残された日本人残留孤児の主人公・陸一心。
日中戦争から文化大革命、そして現代へと激動の時代を生き抜いた陸一心の苦難を描いた作品です。

陸一心は敗戦直後に祖父と母を喪い、娘とは生き別れになった日本人戦争孤児である。
日本人であるがゆえに、彼は文化大革命のリンチを受け、内蒙古の労働改造所に送られる。
スパイの罪状で十五年の刑を宣告され、その使役の日々の中で一心が思い起こすのは、養父・陸徳志の温情と、重病の自分を助けた看護婦・江月梅のことだった。
その後、苦難の日々を経て、日中共同の大プロジェクト「宝華製鉄」建設チームに加えられた陸一心は、三十六年ぶりに妹・あつ子にめぐり合った。
その妹は張玉花と名のり、寒村で過労の果てに病いの床にあった。
一方、中国に協力を要請された日本の東洋製鉄では、松本耕次を上海事務所長に派遣する。
兄妹の実父・松本耕次は、子供らの消息が掴めぬまま、奇しくも陸一心とともに日中合作の「宝華製鉄」建設に参加していた。
七年がかりで完成した日中共同の大プロジェクト「宝華製鉄」の高炉に火が入った。
この瞬間、日中双方にわだかまっていた不信感と憎悪が消え去っていった。
陸一心の胸には、養父・陸徳志の、「お前、いっそのこと日本へ・・」という言葉が去来する。

山峡下りの船上、天嶮を前に言い放った陸一心の「僕は大地の子」という言葉が感動的である。






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